生まれたばかりの赤ちゃんを乳児院に措置するのは虐待? ②

矢満田さんは新生児を乳児院に措置することの問題点を指摘しています。赤ちゃんは特定の大人に継続して世話をしてもらい、そこで愛着形成されていく過程が何より大切です。それが与えられないことは赤ちゃんにとって致命的なことですが、乳児院は8時間で職員が交代するため、特定の大人との愛着形成は望めません。しかしこれば8時間毎に慣れ親しんだ職員との別れを経験しなければならないというシステムの問題で、乳児院の職員の方たちは苦労されながら真摯に職務にとりくんでいらっしゃると認識しています。

2015年の新生児等の措置先が乳児院となっている人数を見ると、東京都は乳児院措置の割合が特出して多く279人、里親への委託は26人で乳児院の割合が9割以上という状況です。しかも0歳児で里親に託した人数は0です。

このような結果になっている理由は、里親に委託する前に障害の有無を確かめる必要があるからというもので、子どもの利益がまったく考慮されていません。

この会には長年養育里親をされてきた方、また自身が長年施設で育ち里親をされてきた方も出席されていて、施設から来た子どもたちの育てにくさ、辛さがどんなに大変かとの話がありました。

多くの人は親の愛情を受けて育ち、その人の中には親が内在しているから自立しても寂しくない。でも、長年親を持たずに育つと、心の中の親の位置にぽっかり穴が空いていて、何歳になっても生きるのがつらい。自分は結婚して子どもも授かり、多くの子どもの里親を引き受けてきて、もう60歳を過ぎているが、それでも生きるのが辛い。東京都のやり方は子どものことをまったく考えていない。どうか子どもたちに早い段階で親を与えてあげてほしいと涙ながらに訴えられた方の言葉が心に突きささりました。

この会には2年後に区に児相を設置することになっている世田谷区長と区の担当部署の方々も参加されていたので、ぜひこの話を受け止め、世田谷区から東京都の児相の在り方を変えていってほしいと思いました。

現在、東京都の22区が児相を各自治体に設置するための準備を進めていますので、杉並区の担当者にもこのような話を伝えていきたいと思います。