ライフライン・水道事業民営化の問題点は

水道事業が民営化されたことに諸外国では、事業が立ち行かなくなったり、料金が上がったり、水質が低下したりするなどの理由で再公営化されているという話もある中、日本では昨年12月6日、改正水道法が強行採決され成立しました。これによって民間企業に長期にわたって水道事業の運営を丸投げするコンセッション方式が取りやすくなったことが問題とされています。1月19日に「世界の水事情と水道の民営化」をテーマに水ジャーナリスト橋本淳司さんのお話を聞きました。

講師の橋本淳司さん(右)、同僚議員の奥田雅子(中央)と

まず橋本さんの主催されているWater Aid Japanの活動の紹介があり、それがとても魅力的でした。水道に地下水が使われている昭島市で水のことを伝える人を育てるプロジェクト、森林を守ることで地下水を守る活動、インドで雨水の活用法を伝えるプロジェクトなど。それについて詳しく聞きたくなりましたが今回の本題は違うところなのでこれはまた別の機会に。

日本の水道事業の一番の問題点は、施設の老朽化です。古い水道管を新しくするのに1キロメートルで1億円もかかるそう。水道料金は設備を維持するための料金を人口で割ったもの。これからは設備の維持に莫大なお金がかかるのに、人口は減少し、節水が進んで事業収入が大きく減少しているため、水道料金を上げないと事業が維持できないのが課題です。30年前のトイレは1回流すのに20L の水を使いましたが新しいトイレは5Lで済みます。ビルが建て替わるたびにトイレも更新されるので節水が進み減収になるという話です。余談ですが、まだ完成していない八ッ場ダムは全く必要ないというのは本当に無駄な話です。このような理由で民営化しなくても水道料金は値上げせざるを得ない状況です。

さて、コンセッション方式とは水道事業の運営・利用など事業全般を民間企業に長期にわたって丸投げすることです。企業は利益を設備投資に回さず役員報酬や株主の配当にあてても、それに口出しすることはできません。管理監督責任は自治体にありますが、長年現場を持たなければ現場がわからなくなり、管理などできなくなります。この支障は契約期間が満了する20年後に出ることになります。途中でコンセッションの契約をやめようとすれば多額の違約金の支払いが必要になります。ドイツ・ベルリンでは2014年の再公営化で運営権を買い戻すのに13億ユーロもの莫大なコストがかかり、ブルガリア・ソフィア市では違約金の支払いがネックとなってコンセッションの鎧に縛り付けられたままだそう。日本の首長が「一度、民間に任せてダメなら戻せばいい」というのはまったくの間違いという話です。

橋本さんは今忙しく日本各地でこのような講演に呼ばれているそうですが、この問題を多くの人が勉強することをとても歓迎しています。自分の住んでいる自治体でコンセッション方式を導入されないように伝えていくことは大変重要です。杉並区の水道事業は東京都が行っていますが、この問題を多くの人に知らせ、東京都にも声を伝えていきたいと思います。