インクルーシブな地域をつくる「超短時間雇用モデル」を杉並でも
先日、杉並家族会が開催した「超短時間雇用モデルと地域でのインクルーシブな働き方」に参加し、東京大学先端科学技術研究センター教授の近藤武夫教授の話を聞いて感銘を受けました。
精神障がい者や難病の人は、その障害特性から毎日朝からきっちり9時から5時まで働く雇用形態は合わないということです。しかし、企業が法定雇用率を満たすためには、週20時間以上、障害者手帳を持つ個人を雇用すると1カウントと算定されます。このため長時間働けない障がい者は福祉就労の「就労継続支援B型事業所」を選択せざるをえない状況が生まれます。
近藤教授が提唱する「超短時間雇用モデル」は東大の先端研が自治体と連携し、社会福祉法人などが中間支援事業者として企業の開拓や障がい者とのマッチング、採用後のサポートを行うのが特徴です。障がい者にとっては社会参加と所得向上につながりメリットが大きいことから、自治体の関心も高く、現在は川崎市、神戸市、岐阜市、渋谷区、港区、品川区で採用されています。
この超短時間雇用は、採用前に職務内容を明確に定義し、臨機応変に他の仕事をさせることはしない、身だしなみやビジネスマナー、接遇など、職務遂行に本質的に必要でないことは求めない、一週間に15分という超短時間から働ける、同じ職場で共に働くことなどがルールとなっています。
障害特性から人とのコミュニケーションが苦手だったり、Yシャツが着られなかったりする人が、臨機応変に違うことを求められたりせず、雇用主が必要とする決められたことだけを超短時間行うことで、障がい者は安心して働くことができます。一方、企業の側にとって超短時間雇用は、課題となっていることを中間支援の担当者が聞き取り、それを解決するための業務を切り出して、企業の課題解決のために働いてもらうので、企業にも障がい者にもメリットがあるウィンウィンの関係が生まれます。
具体的な事例をあげると、精神障害があり人とのコミュニケーションが苦手、かつ感覚過敏がありTシャツしか着たくないAさんは、週に数時間だけ他の社員と同じ部署で技術文書の翻訳にあたっていて、その部署の課長さんがとても助かっているというケース。また、知的障害のあるGさんは商店街のパン屋さんでパンの整形業務を週1時間担い、おかげで店主にとっては店舗に立ってお客さんと交流したかった希望がかなったというケースが紹介されました。
この超短時間雇用では、障がい者は雇用率の充足のために雇用されるのではなく「特定の業務を果たすことができ、職場を助けてくれる人材」として雇用され、時給は一般の労働者と同じ妥当な賃金が払われます。福祉就労の就労継続支援B型との併用ができるのも大きなメリットとなっています。
先に述べたように、障がい者が分けられた場所で仕事を行うというケースも多い中、このモデルでは同じ場所で障がい者も共に働くため、近所の店舗などで障がい者が働いていることが当たり前のインクルーシブな地域になり、本当の意味での共生社会をつくることだと思いました。
学習会に参加されていた方たちは、近藤先生に、「自分の自治体でやる予定はありませんか?」と導入を切望されていました。私もぜひ杉並区で取り入れてほしいと思い、11月議会の一般質問で取り上げ、区の考えをきいたところ、この形態は企業、障がい者双方にメリットがあることから、新たな就労先の開拓にあたっては、超短時間雇用も含めて取り組んでいくと答えました。