私は2人の小さな兄弟を預かることになりました。夜に子どもを預けてまで映画を観に来るなんてパワフルだなあ、そんな人もいるんだなあと感心していたら、預けに来たお母さんを見てびっくり、それは私が息子を通わせている保育園で会ったことのあるお母さんだったのです。こんなところで会うとは夢にも思わなかったし、身近に同じようなことを考えている人がいたんだ、とうれしくなりました。
2人を預かってご飯を食べさせていると、お父さんから電話が入り、雨が強くなるという予報だから今のうちに子どもたちを引き取りに来るというのです。お父さんが子どもたちを連れて帰ると私はスタッフの仕事がなくなり、客席に座って上映前の監督のあいさつから映画の最後までしっかり観ることができたのです。
映画の内容は、山口県上関(かみのせき)に原発建設計画があること、その建設予定地の対岸にある祝島(いわいしま)の人々の農業漁業での暮らしや伝統文化とスウェーデンの人々が選択したエネルギーのことを伝えています。
原発が建つと工場から出る廃液で海水の温度は7℃も上昇し、水が含んだ放射能は海の生き物に取り込まれ、食物連鎖のすえ生態系は壊滅的な影響をうけます。海とともにある祝島の人たちの暮らしを支えてきた漁業は、取り返しのつかないほど大きな打撃を受けることになります。
祝島の人たちは、自分たちの暮らしを守るために、日々の生活を犠牲にして20年以上も原発建設計画への反対運動をしてきました。(次回につづく)