市民運動で社会は変えられるのだと教えてくれた、栖原暁さん逝く

数え切れない感謝を込めて、ご冥福をお祈りいたします

7月20日、市民運動で社会は大きく変えられるのだと教えてくれた活動家、栖原暁さんが62歳の若さで亡くなりました。肩書きは東京大学留学生センター教授でした。
 
私が長年在職したアジア学生文化協会の留学生相談室を作ってきた方で、私も1年間、そこで仕事を教えてもらい、東京大学に移ってからも、留学生支援に関わる人達で作った留学生相談ネットワークで長年活動を共にさせてもらいました。

留学生が急増した90年代初め、学生達は様々な困難を抱えていましたが、一番困っていたのは日本独特の保証人という制度でした。入国在留の保証人、アパートの保証人、大学入学のための保証人、会社に入社するときの保証人。同じ保証人でも内容は重いものから、保証人というだけで何の責任も発生しないようなものまで様々です。

この保証人を日本人のボランティアグループで引き受けてもらう仕組みを作り、支払い義務が生じたとき、また保証している留学生が困ったときのために基金を作り、安心して保証を引き受けられる制度を作っていました。そして、制度自体を変えるために様々な働きかけをし、その活動の成果で入国在留の保証人が廃止されたのは大きな衝撃でした。社会は変えられるのだということを見せてもらったのです。

その原動力は日々相談に訪れる留学生達に接することで生まれてくるものでした。栖原さんの弱い立場の人に深く共感し、とことん付き合う姿勢は特別だったと思います。
よく怒られもしました。一見やくざ風で、社会の不条理には断固として強い態度をとるけれど、照れ屋だったり、いたずら者だったり、だからそういう風にはみせないけれどやさしくて、留学生にも一緒に活動する自分達にもとことん付き合ってくれました。そしてその付き合いを楽しんでくれました。

この間、当時の留学生、相談活動をしていた人たちにたくさん連絡をとり、会い、そのころのことをずっと思い出しています。62歳の若さで逝ってしまったことは本当に残念でなりません。でもこうやって多くの人に本当の強さ、優しさを持って社会を変える力を教えてくれた、それをそれぞれの人が自分の場所で花開かせることで、栖原さんのやってきたことがずっと生きていくのだと思っています。

数え切れない感謝を込めて、ご冥福をお祈りいたします。