虐待を防ぐためにできること
先日、区内で活動している子育て支援グループ“creo”が主催した「社会的養護を知る・学ぶ」勉強・コンサート交流会に参加しました。先ず、勉強会のテーマ「ネグレクト社会~虐待を防ぐためにできること」について、「ルポ虐待‐大阪二児置き去り死事件」の著者でルポライターの杉山春さんの講演がありました。
2010年夏に起こったこの事件は、性風俗産業で働く若いシングルマザーが、マンションの一室に3才と1才9ヶ月の子どもを置き去りにしたまま50日間子どもの元に戻らず、子どもが餓死するという痛ましい事件です。事件をおこした母親(メイさん)は幼い頃、母親にネグレクトを受け、その後父親が離婚し再婚した母親からも虐待(自分の連れ子だけをかわいがりメイさん達は無視するという内容)を受けるというつらすぎる過去を持ち、そのつらい状況を生き延びるために解離性同一障害を発症していました。
メイさんの浮気が原因て離婚することになったとき、一人で3才と1才の子どもを働きながら育てなければならない大変な状況で、自分がどうしていいかまったく分からなかった。彼女が周囲の誰にも助けを求めることができなかったのは、子どものころに手をさしのべてくれる大人に出会えなかったから、だめな自分を救ってくれる人は誰もいないと思ってしまったこと。そして誰にも助けを求めず、子どもたちの存在をないものと自分に錯覚させて置き去りにして、その結果子どもたちのいのちが奪われてしまいました。
杉山さんの話を聞いて、この母親が特別だったのではなく、育つ環境によってこのような人格がつくられ、事件が起きてしまったことがよく分かりました。そして、同じようにつらい状況に置かれているのにSOSを出せない人が、この社会で誰からも気づかれず孤立し、その子どもたちのいのちが危険にさらされている現実が実際にあることに、いてもたってもいられない気持ちになりました。
講演の後に、シングルファーザーの支援をしているNPO法人タイガーマスク基金の安藤哲也さんも加わり、自分たちに何ができるのか考え、参加者同士も話し合う時間が持たれました。それを通し、自分から積極的に地域の中でつながりをつくり、時にはだめな自分をさらけだしたり周囲に助けを求めることで、それを見た人も助けを求めやすくなるのではないかという話に納得しました。
その後、この会の会場となったさゆりの寮の子どもたちと一緒にコンサートを聴き、暖かいメッセージと音楽に励まされ、私も誰かを励ますことができるように頑張りたいと思いました。