セミの羽化の観察会に参加して

必死に羽をのばすセミに声援をおくる

8月1日夜、善福寺川緑地でセミの羽化の観察会が開かれた。先ずは公園の広場に集まってセミの生態についてスライドを見ながら講師の先生から説明を受けた。

セミは暗くなると土から出てきて木に登り、そこで殻を破って羽化する。ときどき木から落ちることもある。登っている途中に落ちるのは大丈夫だけれど、背中が割れて出てきている途中に落ちるとそれは助からない。そんなことを講師の先生に教えてもらいながら観察をした。

あるセミが木ではなく柵の鎖のところに止まって羽化を始めた。その鎖がゆれて下に落ちてしまった。もうダメかと思われたが、そのセミをそっと木の切り株の上に運びそのまま様子を見守ることにした。
セミは普通は木の側面にとまり、背中を破って引力を利用して頭を逆さにして出てくるが、一度落ちてしまったそのセミは木に止まらせられなくて切り株の上に置かれている。殻を脱ぐのは、まだやわらかい足を切り株に踏ん張ってすることになり、大変なことだが頑張っていた。ほんの少し殻のお尻部分を持ってやると、何とかうまく抜け出ることができた。脱いだばかりの殻は湿っていてやわらかかった。熱心にそれを見守っていた小学生の女の子が後から来た子に「ほら、この殻湿っていてやわらかいんだよ」と宝物でもみせるようにして教えてあげていた。

出てきたセミは切り株の上を歩き回っていた。そして淵へ行き、落ちるかと思ったけれどうまく切り株の側面に止まりなおした。羽に体液を送りピンとさせるには側面にとまる必要があったのだろう。見事に移動を成功させた。しかし羽が広がり始めたとき、また1難が。左側の、下にあるべき羽が上の羽と逆さの位置になってしまっていた。このまま広げると飛べなくなってしまう。だからといって人間が羽をもって直してやるわけにはいかない。セミはそれを直そうと必死で何度も羽を動かした。回りのみんなは真剣にそれを見守り声援を送っていた。その願いが通じたのか何度か繰り返すうちに羽を正常な位置に戻すことに成功。先生も、なんと生命力の強いセミだろうと驚いていた。

女の子は観察会が終った後も「私ずっと見ててあげる」、と言って本当にずっとそばについていた。彼女にとってそのセミは大切な宝物のような存在になっていた。
このように心を動かされる体験は、確実にその環境を守る行動に繋がるだろうと思われました。