そこで再会した友人の話を書きます。
彼は昨年の年末、東京での生活を引き払い、那須の山奥の家に1人で電気も、ガス、水道、車もない生活を始めました。雪に閉ざされた寒い山の中、1人でどんな生活をしているのかな、大丈夫だろうかとときどき思い出しては気になっていました。
その彼がとっても元気で、最高に楽しいということを話してくれたのです。朝は太陽とともに起き、真っ白い雪の中で太陽が昇るのを見ると幸せを感じると。
そして、その中で太鼓を叩いたり、般若心経を唱えたりしているそうです。
静かな山の中に住んだら耳が良くなったそう。水は700メートル離れた川からホースで引いていたのが来なくなり、そこまで水汲みに行くことにしたら、いつもと違う道を通るので、違う鳥の声が聞けて楽しいと。
都会ではたくさんの音がするので、ひとつひとつの音を敏感に感じ取るということは自然としないでいる。それが静寂の世界に住むと耳が敏感になり、鳥の声を聞き分けられるようになったということ。
水が来なくなったことさえ、だから違う道を通って新しいことに出会えたと喜べるのがすごいです。
那須は福島原発事故で放射線量がかなり高い場所です。彼は長崎出身で被曝の恐さを良く知っている人です。その彼が、それを承知で敢えて那須に住み、そこで自然に感謝して幸せに暮らす。それが、3.11以降に彼が選択した生き方でした。
彼と3.11以前に原発反対のパレードに一緒に参加して太鼓を叩き踊りながら歩いたことを思い出しました。その彼が今、このような生き方を見せてくれることに私は大きな希望をもらいました。
食べ物は近くの農家で働かせてもらっていただいていてお金はかかりません。何があっても、こうやって幸せに生きていけるということを、私は縁のある人たちに伝えていきたいと思っています。