日本人のためにつくられた慰安婦の映画
元慰安婦が生活していた「ナヌムの家」、そこで暮らすハルモニたちを追い、証言を記録したドキュメンタリー映画、“記憶と生きる”を観てきました。
多くのハルモニが10代の頃、だまされて日本軍の慰安所に連れて行かれ、そこで無理矢理日本兵の相手をさせられました。状況に耐えられなくて自死した人もいた中で、ハルモニたちは生き延びました。しかし、何年も続いた地獄の日々がその後の人生に大きく影を落とし、その頃の記憶が50年たっても彼女たちを苦しめ続けていました。
初体験が強姦、そしてそれが何年も続いた、壮絶な体験はどんなに想像力を使っても無力だと感じます。それでも、日本人によってうけた被害の大きさを私たち日本人は知り、向き合わなければならないと思わされました。3時間半の映像ですが、出会わせてもらったハルモニたちの姿を忘れないでいようと思います。
この映画をどうしても観にいかなければと思ったのは、数日前に、あるシンポジウムで、慰安婦のドキュメンタリーを撮り続け、今は「Wam女たちの戦争と平和資料館」の館長をしている池田恵理子さんの話を聞いたことがきっかけでした。1990年代に慰安婦だった方が初めて名乗り出て、それから大きく社会で取り上げられるようになった頃、私はアジアの人たちへの戦争責任を償う志をもってつくられた職場で仕事をしていました。当時目にする機会はいやというほどあった慰安婦に、しかし私は向き合わずに今に至っていました。土井敏邦監督もその職場が運営する寮出身の方で、度々お会いしていたことにも見に行く思いを強められました。
上映後に土井監督のトークで、20年前の記録を今、映画にして出した理由は、政府が介入して行われようとしている歴史修正主義に危機感をもったからという話がありました。この映像を被害者である韓国人がつくれば政治的なプロパガンダになってしまうから、加害者である日本人がつくらなければならない。それなら、20年前の映像を持っている自分がやるしかないと思ったとのこと。映画の中にはハルモニが描いた、天皇の戦争責任を問う絵も写し出されます。それを世に出すことに覚悟を決めて、私たち日本人が知らなければならないことを残してくれた、この映画を多くの人に観てほしいと思います。