プラスチック削減とゼロカーボンを同時に目指す ~区議会で一般質問

9月13日、第3回定例会で行った一般質問を掲載します。

「杉並区のプラスチック削減とゼロカーボンを同時に目指す取り組みについて」

 

国内では今年もまた7月8月と立て続けに記録的な大雨によって全国で土砂災害など大きな被害が出ました。世界に目を向けると、カナダ西部で49度以上を記録し、もともと涼しい国でエアコンがないため4日間で233人が亡くなったとのこと、ヨーロッパでの豪雨や山火事、アメリカでもカリフォルニアの山火事やニューヨークでの大水害など気候危機がもたらす被害の件数は増加の一途をたどっています。国連の気候変動に関する政府間パネルIPCCは今年8月の報告で、人間活動の温暖化への影響は疑う余地がないと断定しました。

菅首相が掲げた2050年にカーボンゼロを目指すためには、プラスチック削減も同時に目指さなければならないと考えます。なぜなら、石油から生成されるプラスチックは生産、消費、廃棄に伴い大量のCO2を排出するからです。日本は一人当たりの容器包装プラスチックの廃棄量がアメリカに次いで世界第2位であることから国際的な責任も問われています。

一方で世界的にこの問題に取り組まなければならない大きな理由となったのは、プラスチックによる海洋汚染問題です。世界経済フォーラムは2050年には海を漂うプラスチックが重量換算で海の魚の量を上回ると予測しました。漁業の網にからまって命を落とす生物たち、ストローが鼻に突き刺さった亀、大量のプラスチックを飲み込んで命を落としたクジラや海鳥の映像を多くの人が目にしていると思います。またプラスチックにはさまざまな化学物質が添加されており、それを飲み込んだ生物への影響、その魚を食べる人間への影響も懸念されています。

このような背景があり、日本は2019年6月に開催されたG20大阪サミットで、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加の汚染をゼロにすることを目指す「大阪ブルーオーシャンビジョン」を提案し、21年現在は87の国と地域がこれを共有しています。日本でもプラスチック資源循環戦略に基づき、ようやく2020年7月からレジ袋が有料化されました。

そして、今年2021年6月、プラスチックに係る資源循環促進等に関する法律(以下、プラスチック資源循環促進法)が成立しました。プラスチックを減らすための決意を示すこととして、またプラスチック製品の設計から廃棄物処理まで、ライフサイクル全般を対象とした法律ができたことを歓迎したいと思います。しかし、重要かつ押さえておかなくてはならないポイントはプラスチックの抜本的な発生抑制やリユースの推進による総量の大幅削減をどう具体化するかです。

昨年1月私は杉並区の容器包装プラスチックが処理されている中間処理施設とマテリアルリサイクルされている千葉県富津市の工場を見学させていただきました。その工場は無人でプラスチックの素材を光により選別できる最新の機械が導入されていて、24時間フル稼働で処理が行われていました。そして工場の外の敷地には中間処理・圧縮され運び込まれたプラスチックの塊が大量に山積みにされ、長い期間が経過しているのが見てとれました。工場の方の話でも中国への輸出ができなくなり国内の処理が追いつかないこと、これ以上の受け入れは難しいということでした。ここで材料に再生されるプラスチックは強度が弱いため、純度の高いバージンプラスチックと混ぜられ、工場などで荷物を載せるのに使うパレットが作られていました。それ以外はペレットにして、道路のタイルや公園で使われる擬木などに加工される原料として販売しているということでしたが、このような製品のニーズはそれほど多くはありません。プラスチックのリサイクルは限界にあることを実感した視察となりました。

今年度、杉並区では新基本構想が策定され、環境基本計画の改定もあります。国の法整備と並行し、区でも大きな動きがある中で、今後の取り組みを、決意を持って進めていただきたいという思いから、以下質問いたします。

  • 先ずはプラスチック資源循環促進法についてです。この法律によって、今までは可燃ごみとして出されていた製品プラスチックをリサイクルに回す大きな意義は、プラスチックを燃やしてCO2を出さないことだと考えます。プラスチックを燃やして燃料にし、発電を行うなどのサーマルリサイクルは、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルに比べてCO2削減効果は1/3以下です。そもそもサーマルリサイクルは海外ではリサイクルとは認められていません。区でもプラスチックは燃やさない、サーマルリサイクルはリサイクルではないという意思を示していただきたいと思いますが、区はこの法律の意義をどのようにとらえているかうかがいます。
  • この新法には容器包装プラスチックに加えて、バケツやクリアファイルなどの製品プラスチックも自治体で回収しリサイクルをするとあります。しかし製品プラスチックは、例えばはさみやボールペンなどのように金属や他の素材と一体化しているものが多く、リサイクルが難しくなります。区はこの一括リサイクルにどのように取り組んでいこうとしているのか、考えを伺います。
  • 先に述べたプラスチックの国内処理には工場の限界、使う先がそれほどないこと、燃料として燃やされていることなど、多くの問題をはらんでいます。リサイクルする総量を減らすことが一番重要であり急務と考えますが、区の見解をうかがいます。ここで東京都と民間企業のLoop Japanが取り組んだ一つの事例を紹介したいと思います。それは東京都の丸の内エリアや六本木エリアの特定オフィスの社員限定でリユース可能な弁当容器で弁当を販売し、空き容器を回収洗浄した後再利用するというものです。これは毎日大量に消費されている弁当容器を劇的に減らす画期的なアイディアであり、この費用は事業者と消費者が分担することになり、税金を投入することがありません。現在区役所内で販売している弁当で同様の取り組みができないかと思います。このLoop Japanに問い合わせたところ、前向きに検討できればと言っていました。今後このような検討も進めていただけるよう要望いたします。
  • 現在23区で容リプラのリサイクルを行っているのは12区で、11区が可燃ごみとして燃やしている現状があります。また日本全国を見てもリサイクルを行っている自治体の数は7割程度と言われています。この新法によって、すべての自治体が容器包装プラスチックをリサイクルし、さらに製品プラスチックの一括回収が進むのでしょうか、うかがいます。日本が2050年のカーボンニュートラルを目指すのであれば、すべての自治体がこれに取り組むことが必要です。
  • これまで、溶リプラのリサイクルの役割分担は、自治体が収集、選別、圧縮、保管、生産者が再商品化を担い、経費の負担は自治体が約8割、生産者が約2割という、公的負担に極端に偏った現状がありました。この新法によって負担割合に変化があるのかうかがいます。また、区も私たち市民団体も長年主張してきた、生産者が責任を持って収集運搬選別保管、再商品化までを行い、その価格は商品に含めることによって受益者である生産者と消費者が負担する拡大生産者責任が進むのかどうかもうかがいます。
  • 自治体が容リプラと合わせて製品プラを回収することになれば、容器包装とはまったく形態の違う製品プラを中間処理する工場の設備投資は避けてと通れません。このような工場への設備投資のための国からの補助はどのようになっているのかうかがいます。
  • 新法には製造事業者や小売事業者が自主回収しリサイクルすることを可能とする措置が盛り込まれました。これは拡大生産者責任の上からも、また上質な高度リサイクルができる点からも歓迎されるべきことですが、具体的にはどのように進められるのでしょうか。うかがいます。

8. 次に区の計画へプラスチック削減の取り組みについてどのように記載するかについて質問します。

今、まさに新たな基本構想の答申が区長に提出される段階に来ています。この基本構想策定を受けて、区の環境基本計画の改定が行われる予定です。基本構想審議会に委員として参加させていただきましたが、環境分野では気候危機を回避するための温暖化防止対策が大きく打ち出されていました。プラスチックの問題も気候危機同様に世界的に大きな課題であり、CO2削減のためにも取り組まなければならないことです。東京都のゼロエミッション東京戦略では温暖化対策にはエネルギーと資源の脱炭素化の両方が必要と明記され、プラスチック削減プログラムが示されています。杉並区の環境基本計画の中にも温暖化対策と連動してプラスチック削減の計画を示すことが必要だと考えますが、区の見解をうかがいます。

9. 東京都のゼロエミッション東京戦略と都内自治体との連携についても伺います。都が行おうとしているプラスチックの削減には、区市町村の取り組みと連動して行う必要があると思うのですが、現在どのような協力体制があるのかうかがいます。

10.次に具体的にプラスチックを減らす取り組みについて伺いたいと思います。これについては何度も質問に取り上げて、ご答弁もいただいているところですので、その進捗状況について伺いたいと思います。直近で2019年9月にプラスチック削減によって海洋汚染を防ぐ取り組みについて質問しました。

そこで区の関係で行われる会議でペットボトル飲料の配布を行わないでほしいと求めたところ、各所管に代替えの方法を求めていくということでした。この取り組みがどの程度進んだのでしょうか、うかがいます。今はプラスチックを減らすことに取り組まなければならないことは多くの区民が認識しているので、会議参加者の理解は非常に得やすいと思います。会議の案内に「プラスチック削減のため、飲み物が必要な方はご持参ください」と一言入れれば、理解協力が得られると思いますので、ぜひ検討をお願いします。

11.既存の冷水器の横に、マイボトルへ給水くださいという案内を設置していただきたいと申し上げ、まずは、冷水器の横にマイボトルへの給水が可能である旨の表示を含め、より多くの区民にご利用いただけるよう工夫するとお答えいただいていますが、その取り組みがどのように進められたのかうかがいます。

12.マイボトルへ給水できる機器の設置については、ウェルファーム杉並や西永福にできた複合施設に設置され、対応がとられていることに感謝いたしますが、まだ設置個所は少ない状況です。今後も新しい施設建設等の際には設置を進めていただきたいと考えますが、区の見解をうかがいます。

13.次に区立施設に入っている事業者に使い捨てのストローやその他の製品を出さないように働きかける点についても前向きな答弁をいただいていたところですが、どのような話し合いが行われ、どのような成果があったのか伺います。新法ではスプーンなどの使い捨てプラスチック製品12品目を多量に提供する企業に削減対策を義務付ける方針です。区の施設に入っている事業者は義務の対象にはならないと思いますが、プラスチック削減への理解は得やすいと思いますので、さらなる助言や働きかけをしていただくようお願いいたします。

14.区役所本庁舎や区立施設に設置されている自動販売機の中にペットボトルを入れない自治体や民間施設の取り組みもクローズアップされています。区でも検討いただきたいと思いますが、見解をうかがいます。

15.これが最後の質問です。プラスチック問題について、区でも情報紙「ごみパックン」などで分かりやすく取り上げてこられたと承知しています。しかし、これを目にする区民が少ないことが残念です。今区報では人の特集を組まれていますが、折を見て環境関係の特集を取り入れ、プラスチック問題についても取り上げていただければと思いますがいかがでしょうか、うかがいます。

区が旗振り役になって、プラスチックの削減に取り組みましょうと表明することが区民の活動を後押しし、力強い支援になります。これまでも提案した講師の講演会などを開催していただき感謝しています。環境問題に無関係でいられる人は一人もいません。より多くの人々に理解や関心を広げるための区の役割は大きいと思います。プラスチック削減の必要性を知れば、協力の輪は広がると思います。区内には情熱を持ってプラスチック削減、気候危機対策などの環境問題に取り組む多くの区民がいます。この危機を乗り越えるためには区民参加が不可欠ですから、多くの区民と協力し活動を広げていただきたいと思います。私も一緒に取り組むことを申しあげ一般質問を終わります。