糸の作り方は、綿の花から種を取り除き、それを綿打ちしてふわっとさせ、それを重ねて丸めたものに縒り(より)を加えていくというシンプルな作業です。大畑さん指導の下、先ずは何の道具も使わずに、手だけでよりを加えて糸を作ってみました。30センチ作っただけで、よりを加える右手はすぐに疲れてしまいます。次にごく簡単な道具、駒を回し、その回転で糸を紡ぐ方法を教えてもらいました。こうして、糸を紡ぐという仕組みを理解した上で、いよいよチャルカを使っての糸紡ぎを教えてもらうことになりました。
この日使ったチャルカは携帯用のもので、ガンジーが投獄されていたときにも糸紬ができるようにその弟子が作ったという非常にコンパクトなものでした。原理は理解できても、なかなか満足な糸になどなってくれません。ちょっとできては切れ、その糸から繋げて紡ぎ出すのに四苦八苦、少し練習しただけでできるようなものではありません。それでもうまく行ったときはなんともいえない心地よさを感じ、布を織り上げ服をつくるというのは本当に気の遠くなる作業なのだと実感することができました。
作業をしながら、大畑さんの話してくださるガンジーの思想に耳を傾けました。イギリスは大量の綿花をインドから自国に持って行き、産業革命を経て作られた機械により糸を紡ぎ、織り、その自分達だけでは消費しきれない大量生産された生地を他国(インド)に持ち込み、インドの人々から労働を奪っていった。まさにそれは今世界に格差を広げ貧しい人々を生み出し続けるグローバル経済です。ガンジーは当時からそのことを見抜き、自分達で棉(わた)を育て、糸を紡ぎ、機織りをして衣類を賄っていくこと、そして自分達の食べる物は自分達で作るという自給自足の生活が真にすべての人々を平和に導く道だと説いてきたそうです。
会場となった自由学園では、豊かな緑の中に昭和6年に立てられた学び舎が今でも大切に使い続けてられていました。教育の根幹には食が置かれ、時には自分達で食べ物を育て、自分達の食べる昼食は毎日生徒達が作っています。チャルカ、ガンジーの思想をこの場所で穏やかな学園の先生方、そして参加者の方々と共にできたことは、静かで心豊かな時間になりました。