人生の恩師 福島みち子さんのこと

長年に渡り、ボランティアで留学生からの相談を受けてこられたボランティアグループ留学生相談室を支えてこられた福島みち子さんが今年の2月2日、80歳でご逝去されました。

 私は同じ時期にアジア学生文化協会で留学生からの相談を受けていました。私費留学生が急増した1980年代の後半から90年代の初めにかけて民間の留学生相談の現場には、在留に関わる保証人の問題、日本語学校やバイト先、大家さんとのトラブル、部屋を借りるときの保証人がいない、進学のことなどありとあらゆるたくさんの相談がよせられていました。これらの相談支援に関わる人たちが情報を交換し、国や制度に対して様々な働きかけをしていくために作られたのが1月1回の集り、留学生相談ネットワークでした。そこで私は福島さんと会い、さまざまな場面で協力し多くを学ばせてもらいました。

 法輪功をしていた留学生が日本での学業を終え、中国での就職も決まり、帰国したのですが、法輪功(私は気功を含む新興宗教のようなものと理解している)であるため母国に入国できずに日本に送り返されたことがありました。彼女は難民の申請をしましたが、それが通らず支援が必要な状況に追い込まれました。私は福島さんから彼女が緊急で入居できる部屋がないかと連絡をいただき、私の職場の近くのアパートを紹介したことがきっかけでこのことに関わりました。このとき福島さんは法輪功に対する迫害は中国で起きている大変な人権侵害だと認識し、同じく被害を受けている人たちを救済するために弁護士の方達と連絡をとりあって支援の会を立ち上げました。行き会った留学生にとことん付き合い、覚悟して活動をする姿に教えられました。

 ベトナムからの学生で私が産休にはいる前に、長く時間がかかる相談だと思って福島さんにお願いした方に、先日開かれた福島さんのお別れ会で5年ぶりにお会いしました。

その方は大学に合格したのに入学手続きを間違えたことで入学できなくなり相談を受け、すぐに福島さんに電話で内容を伝え会いに行ってもらいました。その学生の話では、事情を聞いた福島さんは、来年大学を受けなおすために今年は学費の安い専門学校に入るよう進め、その場で入学金など必要なお金を貸してくれて、本当に驚いたということでした。私は福島さんから年賀状で毎年、彼の様子をお知らせいただき、今年の年賀状には無事大学を卒業し日本で就職され、先日は日本女性と結婚式をベトナムで挙げ、福島さんもそれに招待されてベトナムに行ってきたと嬉しいご報告をいただいていました。

 相談を受けていた当時、私はよく福島さんだったらどう対応されるだろうと考え、実際に困ったときには相談に乗っていただきました。決して追いつけない目標でしたが、その姿勢を見せていただき、一緒に事例検討できることがありがたく貴重な経験でした。

一緒に留学生相談ネットワークを立ち上げ、同じく相談とは何かを教えていただいた、少し先に逝ってしまった栖原さんと天国から見守っていただきたいと思います。

政治家は大風呂敷を広げるからきらいとおっしゃっていた福島さん。私が選挙にでることになって連絡すると、私はいつも生活者ネットに入れていますよ、と言ってくださいました。お二人に今も頑張っていると胸をはって言えるように、自分を省みつつ今の仕事にも取り組みたいと思っています。